処理能力の高さで,破壊と建設の場をわけているのなら,ある日,それが逆転する日もくるだろう。破壊するに値する場所は,さて,どちら,か。
IBM社が23日,世界最大のスーパーコンピューターを核研究施設に運び込んだ。そのスーパーコンピューター「ASCIホワイト」は,プロセッサーを8192個積んでおり,1秒間に12兆3000億回の演算をこなす。ASCIホワイトは,核爆発実験のシミュレートに使われる。
記事を読んでいるだけで途方にくれてしまいそうなコンピューター。ディープ・ブルーの1000倍,これまでの最速マシン「ASCIブルー」の3倍。ちなみに現在のマックのG4チップは10億回/1秒,インテルが設計している64ビットチップのアイテニアムは60億回/1秒の処理を行う。はてはて,12兆回の演算とは,どんなものなのか,想像もつかない。原子の動きを明確にシミュレートし,爆発の模様を寸分の狂いなく画像化し,巨大スクリーンに映し出すという。
現時点でこれ以上ないコンピューターが,世界の破滅のために使われるのは,妙な暗示なのか。なによりも計算を必要とすることとは,やはり,破壊であるのか。現在のパソコンのマルチメディア機能の素地が考えていた男は,核開発の先頭に立っていた男だった(過去記事)。リアルで健全に生き続けるために,アンリアルで破壊と破滅を求める人間。今よりもぐんと演算能力が進んだとき,それが逆になることも,あり得ない話ではない。我々が生きるに値する世界はどこか。破壊するに惜しくない世界は,どちら,か。
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